vs☆A

アンチジャニが嵐ファンになっちまったよ

歌舞伎座のカーテンコール。

この世には稀に「一つになる」という一瞬が存在する。

嵐コンでも何度か、うっわ!やっば!楽しい!なにこの空気感!っていう

5万5000人がひとつになった・・・!って感じられる状況になったことがあるけれど、

それってやっぱり奇跡的なことで、

多くてもオリンピックの頻度(4年に1度)くらいでしか体験できなくて、

でもその空気を味わったときって本当に最高で尊くて幸せすぎて

天にも昇るような高揚感に包まれる。

そしてそれは、

何年ぶりかで訪れた歌舞伎座

母の誕生日にとプレゼントをした八月納涼歌舞伎の千穐楽中の千穐楽

第3部の一番最後に起こりました。

笑福亭鶴瓶新作落語を歌舞伎化した新作歌舞伎

「廓囃(さとのうわさ)山名屋浦里(やまなや うらさと)」

__________________________

舞台は浅草を隅田川ごしに望む向島

地方から江戸に派遣されてきた堅物の男(勘九郎)は

つまらない男だといつも寄合の仲間から陰口を叩かれていた。

そんな中、隅田川の花火を楽しむ寄合が行われる。

男を困らせて楽しもうとする大名の意地悪によって

次の寄合はそれぞれの東京の妻(つまり遊郭の女)を紹介し合おうと提案される。

もちろん堅物の男に馴染みの女など居ず、男はほとほと困り果てる。

花火が咲き誇る中、どうしたものかと考えていた男の前に一艘の舟が現れる。

その舟に乗っていた遊女とおぼしき女子は、どうやら川に何か大切なもの(扇子だったかかんざしだったか・・・)を落としたようで

それを知った男はかわいそうにと体を川に落としそうになりながらも

必死で探してあげた。

そんなとき、もう諦めたら、新しいものを買ってあげるからと舟ののれんを上げて出てきたのは煌びやかな花魁(おいらん/七之助)。

打ち上がる花火ともに、男の胸には花魁の美しさが刻まれ、一目でその魅力に取り憑かれてしまう。

(恋に落ちる瞬間に花火があがり、、はとてもベタな演出だけどそれが逆によかった!キュンキュン!)

恋に落ちた花魁の名は「浦里(うらさと)」。

無数の遊郭が立ち並ぶ吉原でもナンバーワン、

断トツの人気を誇る人気の花魁で、山名屋という遊郭にいるらしい。

堅物の男は意を決して山名屋へ向かう。

しかし男は堅物。浦里を買いに来た訳では無い。

山名屋の主人に事情を説明、どうか浦里を寄合の間だけ貸してくれないか、

あれほどの美しさ、気高さを持った花魁は浦里しかいない、地元の誇りのためにと頼む。

人気ナンバーワンの浦里は大物、それも大大名しか相手にしないような花魁、

もちろん主人は断るが、その話を立ち聞きしていた浦里、やらせてくれと申し出る。

寄合当日。

ほかの宴に出ており遅れるという浦里。

ひとり先に寄合に現れた男を見て、やっぱり男は遊女など連れてこられなかったと笑い、蔑む寄合の仲間たち。

嘘つきは謝れと言い寄られているところに

ヒーローのように参上する浦里。

一目逢えればそれだけで自慢となるような伝説の花魁・浦里の登場に驚きを隠せない仲間たち。

浦里は「どんなにお金や地位があってもダメ。私がお慕意申し上げているのはこの人だけ。」

「こんな他の女がいる席では、他の女に男の心を奪われないか心配」と惚気けてみせる。

男の評判はうなぎのぼり。

吉原一の浦里の心を奪った男としてたちまち有名となる。

今まで男を嘲笑っていた仲間たちも男を見直し態度を改めた。

数日後、山名屋へお礼に向かう男。

心ばかりのお礼を渡したいといくらかのお金を包んだが、それを浦里はキッパリと断る。

貰ってくれと引き下がらない男に、浦里は自分の生い立ちを話しはじめる。

花魁言葉では話しづらいからお国の言葉で、と話し始めた浦里。

「オラ・・・」

(美しい浦里が訛るのが可愛いすぎたーー!キュンキュン!)

とある片田舎に生まれた浦里。

家は貧しく、食べるものにも困るほどだった。

ある日父が言った「江戸に興味はないか?美味しいものがたくさん食べられるぞ」

浦里はそれが、自分が売られることだと気づいていた。

だが、家族を思い、美味しいものに釣られるフリをして、吉原に来た。

それからの日々は辛かった。

誰かを好きになっても、報われない立場。

好きだという純粋な気持ちも、支払われるお金が存在することによって、

自分はただの道具になってしまう。

男と、初めて会った川辺。

物を落とした遊女を見て、一生懸命取ろうとしてくれた姿に惚れた、と。

そしてその後男が山名屋に現れ、

「私が寄合に連れていきたいのは浦里しかいない」と言ってくれたことが嬉しかったと。

だから、このお金を受け取っては、

この心も道具になることになってしまう。

私の恋心を奪わないでくれ、と浦里は懇願する。

では何か、別のものを、と提案する男に浦里は「私の本当の情男(いろ)になってくれ」と頼む。

田舎に残してきた妻子を裏切ることはできないと頑なに拒む堅物の男。

そんな男に浦里は「兄妹のような関係でいい。たまに来てお茶飲み話をしてくれればいい」と言う。

それなら、と快諾する男。

「花魁道中」を見ていきなさい、と提案する主人。

魁道中、たくさんのお付きを従えて山名屋を後にする浦里。

「花魁!」

思わず声をかける。

「花魁、なんて水くさい。」

「浦里、とやさしく呼んでおくんなまし。」

「・・・う、ら、さ、と。。」

照れながらも浦里を呼ぶ男。

「・・・お兄さん。」

(兄妹のような関係でいいと言った浦里と、本当の中村屋の兄弟の関係が重なったセリフ!うおーーー!なんて気が効いてる!)

そして美しくも気高い浦里が花道をゆっくりと練り歩き、幕。

廓囃山名屋浦里。

叶わないふたりの恋心が美しい、

切なくもあたたかい友情の物語。

__________________________

笑えて、そして最後はちょっぴり涙するこの新しい演目が素晴らしすぎて、

自然と皆が溢れ出すように拍手をして

なんとかこの感動と感謝とねぎらい

演者はもちろん大道具小道具衣装すべての関わる人に伝えたくて

(舞台装置も本当に素晴らしかった!!!

特に山名屋の回廊~中庭のセットは見たこともない素晴らしさ!天晴れ!)

とにかく心から拍手をしたくて、それでしか感動を伝えられなきくて、伝えきれなくて

そうしてる間に拍手がどんどんとうねりのように大きくなっていって

万雷の拍手とはこういうことを言うのだなあと鳥肌のたつ思いで

うっわーーーーなにこれ例のやつ(ひとつになる瞬間)だーーーー気持ちいいーーーー

と、感動に震えていたら

幕の端っこがキュイっとつままれるのが見え、

まさかなーやらないよなーーー?やる?やるのーーーー?!?!

歌舞伎座でまさかのカーテンコール!

初めて見たー!と思っていたら、おとなりのおとなりの、歌舞伎マニアのような方も驚きを隠せない様子だったので

本当に本当になかなかないことなのだとおもう。

幕が開き、万雷の拍手と総立ちのスタンディングオベーションで迎える観客に

驚き、涙ぐみながらアイコンタクトを交わす勘九郎七之助兄弟に思わず涙。。。

鳴り止まない拍手のなか、

最後はたまたま見に来ていた原作者である鶴瓶さんとタモリさんが壇上にあがり大団円。

元々タモリさんがブラタモリの勉強で吉原のことを調べていたときにこの話の元となる実話に出会い、

いいとも!の楽屋で鶴瓶さんに話したところ、落語にする!と。

そしてそんな話を小耳に挟んだ勘九郎さんが

鶴瓶さんの落語を見に行き、

すぐにこれを歌舞伎にしようと決めたと。

そんなウラ話も聞けて、

大盛り上がりの中、大満足で歌舞伎座を後にしました。

きっとこれからも歌舞伎座で何度となく上演されるであろう

この素晴らしき演目の

記念すべき初演を見られたことを誇りに思いたい!!!

本当に素晴らしい舞台でした。

次に上演されるときはみんな見に行ったほうがいいよ!!!!!