vs☆A

アンチジャニが嵐ファンになっちまったよ

バーテンダー#6【書き起こし】

バーテンダー6話。

今回はオープンテラスで美和ちゃんとお茶する
白シャツ溜くんに激萌えでしたv



今回は、もしかしてネットは見られるけど
ドラマは見れていない…という人がいたら、と思い
続きに6話のセリフをすべて書き起こしました。
よかったらお役立てください^^


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バーテンダー #6

「はいよ~!ブリ照り定食あがったよ!」
「かしこまり~~!」
バンダナを頭に締め、さくら食堂を手伝う溜。

「はいっ!30万円のお返しです!ありがとうございます~!」とお客にお釣りを渡す。
「悪いねぇ溜ちゃん。ラパンの仕込みもあるのに」とおかみさん。
「全っ然!三橋さんもしっかりこっちを手伝ってこい、って。はいっお待ちどう~~!」

「助かるねぇ~~。こいつが年甲斐もなくテニスなんかすっからよ~」
「私ゃ八王子のお蝶夫人と呼ばれた女だよ!」
「何十年前の話してんだよぉ」
あはははは!
夫婦喧嘩にどっと沸く店内のお客さんたち。
「あんたたち!もたもた食ってないで早く仕事行きな!」


編集部
加瀬(溜の師匠)が表紙の雑誌を手に取る美和。
「…加瀬五朗の取材ですか?」
「そ。フランス大使館主催のパーティーのために凱旋するんだって」と編集長。
「しっかりね!世界のラッツホテルのチーフバーテンダーが来日なんて、
滅多にないんだから!」と美和の肩をたたいて去っていく。

なぜ前のバーを辞めたのか問いつめた時に怒った溜を思い出す美和。
「佐々倉さんをクビにした人……」

その頃、ホテルカーディナルには
加瀬とフレンチシェフの山之内清治(大友康平)がフランスから到着していた。


BAR ラパン
「…お待たせしました。」美和にカクテルを差し出す溜。
「……佐々倉さん…、もう知ってるかもしれないけど…」
「何?」
「今日ね…」
「うん」
「………」
「ん?」
「…やっぱり、なんでもない。」
「ふふっ、何?気になるなぁ」

「佐々倉君、テーブル席、ウォッカアイスバーグジントニック。」と杉山。
そのオーダーを聞いて固まる溜。
「……どうかした?」と美和。
「…!ううん、なんでもない。かしこまりました」
美和の携帯が鳴る。
「はい。……はい、…わかりました。」
美和の様子を察する溜。
「どうしたの?」
「……おじいちゃんが…倒れた…。」
「…えっ?」


深夜の病院。
病室に駆けこむ美和と溜。
「おじいちゃん!!!」
テレビの漫才を見ながら大笑いしている来島。
「美和、知ってるか。このコンビ!面白いぞ~?」
「あの……お体の具合は…?」と溜。
「あー。ちょっとめまいがしただけで、大騒ぎされちまったな。
明日は退院だ」
何も言わずうつむく美和。
「美和、どうした?」
「…心配するに決まってんでしょ!!!」
「ははははは。大きな声を出すな、今度は心臓が止まっちまうよ」
「そんなこと冗談でも言わないで!!」
怒る美和をなだめる来島。
「でも、よかったですね。大したことなくて。」と溜。
コンコン、とドアをノックする音。
「はい、どうぞ~」
「失礼します」
開いたドアを見つめる溜の視線の先には、かつての師匠、加瀬がいた。
「加瀬くんにはな、ずいぶん面倒かけちまったんだ」
「一緒に食事をしてて倒れてここに運んでもらったんだ。
孫の、美和です」美和を加瀬に紹介する来島。
「はじめまして…加瀬です。」
「こちらこそ、祖父がお世話になりまして」
「加瀬くんがな、大使館の仕事で来日すると聞いて
うちのフランスフェアの特別顧問に、と頼んだんだ!
だからカーディナルに滞在してもらってるんだ」
「あの…私記者をしていて。今週、取材をお願いしています。
よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「あ!それから彼はね…」と溜を指す来島。
「あ、そうだ!彼は…紹介するまでもないな。」
「……お久しぶりです。」加瀬に深々とおじぎをする溜。
「………」無言で溜を見つめる加瀬。
思わず目をそらす溜。
そんなふたりを見つめる美和。


病院の帰り道、ふたりで夜道を歩く加瀬と溜。
「…元気そうじゃないか」
「……加瀬さん…僕はまた日本でバーテ…」
「何も言う必要はない」
「…でも」
「…君と私は、もう師匠でも弟子でもなんでもないから。
……じゃあ私はこれで。」
ひとり取り残される溜。

~回想~
フランス・パリ
加瀬のBAR
フランス語でオーダーを受ける溜。
『お待たせいたしました。ご注文は?』
『…ウォッカアイスバーグを』
『私はジントニック
『かしこまりました』
ウォッカアイスバーグを作る溜。
『ウォッカアイスバーグです』
続いてジントニックを作る。
ジントニックです』
ジントニックを飲む客。
その途端にゆがむ顔。
『君は本当にヨーロッパカクテルコンクールで優勝した佐々倉溜か!?』
『はい…そうです…』
怒って代金のコインをジントニックのグラスに落として去っていく客。
茫然とする溜。

閉店後の店
『…色々考えましたが、さっきのジントニック、僕にミスはありませんでした』
『…バカ者。』と加瀬。
『なぜお客様にもっと真剣に向き合おうとしない?』
『溜…お前はクビだ』
『………あの…どうして?』
『………。』
『加瀬さん…!』
無言で去っていく加瀬。

~回想終わり~



翌日。
ホテルカーディナル会長室
「おじいちゃ~~ん^^」
そこではカーディナルの社員たちが会議をしていた。
「ごめんなさい、お話中だった?」
「いやいや、もうすぐ終わる。そこに座って待っててくれ」

「…えーと…そうそう、チーフバーテンダーの件だがな、あれは了解した。」
社員に伝える来島。
「急かすようで申し訳ありませんが、これ以上
メインバーのオープンを遅らせることはできません。4月までにはなんとか。」
「うむ。3週間以内に決めよう。
それから…山之内シェフの一件な。あれは…ワシが預かる。」
「よろしくお願いいたします」
会議が終わり会長室を出ていく社員たち。
「ほんとに決めるの?バーテンダー。」と美和。
「うん…。もうこれ以上、延ばせんからな。
それより問題は。山之内シェフの一件、だ…」
「何?山之内シェフの一件って」


カーディナルの厨房で用意された食材を
険しい表情で手に取る山之内。
「…あらかじめすべての食材を、パリと同じもので揃えてほしいと伝えましたよね?」
「時間的にもコスト的にも折り合いがつかず…」とカーディナル社員。
「食材が揃わなければ、私はなにひとつ作らない。」
怒って厨房を後にする山之内。


さくら食堂。
またおかみさんの代わりに手伝う溜。
「フランスの食材しか使わない日本人シェフ…?」
「来週から始まるフランスフェアの目玉が、山之内シェフの料理なんだけど
おじいちゃん困ってて。」
「バリバリのゴーリストか…」
「ゴーリスト?」
ド・ゴール主義者のこと。
アメリカの大国主義に反発するあまり、なんでもフランスが世界一だと
思ってしまっているフランス人のことをそう呼ぶ人もいるんだ」
「でも山之内シェフは日本人だよ?」とお味噌汁を飲む美和。
「フランスに魂売るなんざ、日本人の風上にも置けねえなぁ!」と店主。
「溜ちゃん、まかない食べちゃって!」
「おっ!ぶり照り!うまそ~~~!
俺おやじさんのぶり照り大好き!いただきます!」
嬉しそうにうなづく店主。
「ぶり照りはね~~みりんが命。味わいのキモはこれぜよ~~!」
どん!とカウンターにみりんの瓶を出して溜に見せる。
「この人、みりんはこだわっていいの使ってんの!」とおかみさん。
「10年熟成させた、極上のみりんだ!」
「10年!?うまいわけだ!」
「ま、料理人として、そのゴリゴリストってのが食材にこだわる気も
わからなくは…」
「おやじさん!おやじさん!」
「えっ?」
「ゴーリスト。」

「……」
話をするふたりの隣でぶり照りを見つめる美和。
それに気づく溜はとっさにぶり照りを手で隠す。
「狙ってる!?」
「違うよ!!!(焦)
……あのー…ちょっとお願いがあるんだけど…」
「…ん?」



川べりを自転車を押しながら歩く溜。
追いかける美和。
「ちょっと待ってよ!!」
「何回頼まれたってダメなものはダメ!」
「山之内シェフみたいなおじさん説得できるの、佐々倉さんしか思いつかないの!」
「(笑)もっと友達増やしなよ!」
「ラパンでもてなしてくれるだけでいいの」
「だから今回は…」
「加瀬さんも来るからだめなの?」
「………はぁ。。」ため息をつく溜。
「私考えたの。なんで佐々倉さん、ホテルのメインバ-のバーテンダーになるの、
乗り気じゃないんだろう、って」
「加瀬さんにクビにされたこと、まだ気にしてるの?」
「………」答えない溜。
「これを機に話し合えばいいじゃない。
加瀬さんに、今の佐々倉溜を見せなきゃ、先に進めないよ!」
「何も知らないのに勝手なこと言わないでくれよ!」
「私はただ…佐々倉さんにメインバーに立って欲しいから…」
「そうやって自分の考え方押しつけるのやめてよ。
…美和さんが会長のために必死なのはわかってる。
でも…これは加瀬さんと俺の問題だから」
自転車で走り去る溜。



カーディナル会長室
「会長…この検査結果を見ても、やはり入院していただかないと。」
「はっはっはっはっは…しつこいなぁ~~君も。」
「しかし…これ以上ご無理をなされると…」
「あのなぁ、自分の引き際は、自分で決めたい。と、思うだろ君も。」



オープンカフェで加瀬の取材をする美和。
「…では、約束のお時間がきましたので…。」
「すいません、あまり時間がなくて」
「いえいえ、あの、先日は祖父までお世話になってしまって…すみません」
「とんでもない。今度の山之内シェフとの会食、
美和さんからサプライズがあるそうですね。楽しみにしてます。」
「……はい…。」
「ではて、失礼します。」
「………あの、加瀬さん!」
「なにか?」
「…佐々倉溜さんのこと…どう思ってるんですか?」
「……」
「すいません…立ち入ったこと聞いて。」
「……彼と私が師弟関係だったのは過去のことです。」
「佐々倉さんにとっては、過去のことじゃないと思います。
……どうして、佐々倉さんを辞めさせたんですか?」
「……」
「…佐々倉さん、今のそのことで苦しんでます。
口にはださないけど、わかるんです。」
「……ウォッカアイスバーグジントニック
彼が私の下で、最後に作ったカクテルです」
立ち去る加瀬。

前にラパンでウォッカアイスバーグジントニックのオーダーを受けた時
溜の様子がおかしかったことを思い出す美和。



BAR K
「いらっしゃいませ」
「こんばんは。」
「お珍しいですね、美和さんがおひとりで。」
「祖父にお花を届けるように頼まれたので」
「……ありがとうございます…。」
深々とお辞儀をする葛原。



BAR ラパン
「今日はいらっしゃいませんでしたね、美和さん」と杉山。
「お忙しいんでしょう」と三橋。
「いつもは2日と空けずにお越しになるのに」
美和に言われた言葉を思い出しため息をつく溜。

ラパンの電話が鳴る。
「はい、バーラパンです。………はい…少々お待ちを…。
…佐々倉、バーKからだぞ…!」
「……えっ?」



BAR K
「どうぞ、こちらです」
通される溜。
その先にはカウンターで酔いつぶれた美和。
「美和さん…!」
「この程度で会長に連絡するのも申し訳なくてな」と葛原。
「美和さん…大丈夫?ね、美和さん起きて!
…美和さんお酒強いはずなんだけどな…」
「ウォッカアイスバーグジントニックばかり、
かなり飲んだからな。
…俺に作り方まで聞いて…何かお前に関係ありそうだな?」
「……」
「…会長は、3週間後までにカーディナルのメインバーを任せる人間を決めるそうだ。」
「美和さん起きて!帰ろ!」
「悪いが…俺は今のお前に負ける気がしない…」
……タクシー代だ」
「結構です」


美和を背負い、歩く溜。
「…とは言うものの、やっぱもらっとけばよかったタクシー代…」
「うぅぅうう…」
「ねぇ、ちょっと美和さん吐かないでよ」
「ささくらりゅううううう!」
「何?」
「もっと本気になってみせてよー」
「俺がカーディナルのチーフバーテンダーになってやる、って」
「…言ってみせてよ……」
「………美和さん、俺は…」
溜の背中でいびきをかいて眠る美和。
「……。」
美和を背負い直し、再び歩きだす溜。



「まったく……!
嫁入り前の娘が、バーで酔いつぶれるなんて…」
「ごめんなさい」
美和は会長室へ呼び出されていた。
「おぶってきた奴が、タチの悪い男だったら…」
「もうわかったってば!!もとはと言えば
おじいちゃんが葛原さんに花を届けろなんて言うから…
私じゃなくてもよかったじゃん…」
「わしがな、毎年、この手で送ってきた花だ。
代わりはお前しかおらん!」
ほほ笑む美和。
「葛原の…フィアンセがな、飲酒運転の車にはねられて亡くなった。
昨日がその命日だった。
…6年前のことだ。葛原は悲しみのあまり酒を憎んだ。
だから、バーテンダーの職を放棄した。一時は荒れに荒れたらしい」
……だが、やつはカムバックした。フィアンセとの約束を守るためにな。」
「約束って?」
「将来は、最高峰のホテルのチーフバーテンダーになるという誓いだ。
だからやつは、今婚約者との愛にかけて、カウンターに立っておる。
葛原を絶望させたのも酒だが、再起させたのも酒ということになるな…。
お前には、本当のことを知っておいてもらいたいからな。」



BAR ラパン
「来島会長……!」
「オープン前に、すまんな」
「いえ…!」
「どうぞこちらへ、いらっしゃいませ」
「お体の具合は…?顔色が悪いようですが」
「…冷えたから、一杯もらおうか」
「では…ブルショットはいかがですか?」
ブルショットは…ビーフコンソメにウォッカを入れたもので…」
「知っとる。」説明を始めた杉山を遮る来島。
「これは失礼を…」
「スープがわりに、それにしよう」
「かしこまりました」

「美和が、迷惑をかけたな」
「いえ」
「あ、それから…山之内シェフの一件もな」
「それは…お断りさせていただきました」
「美和さんからさきほど…予約を頂戴しました」と三橋。
「あの、いや、僕は…」
「少しだけ…事情は聞きました。
佐々倉君が当日、カウンターに立ちたくないというなら、
私と杉山でお相手いたします。」
「…え?!あ、お任せください。」驚く杉山。

「僕はもう加瀬さんの前では…カウンターに立てません…」
「おい。生涯をかけた仕事に背を向けるということは、
一生を放棄するに等しい。」
「……」
「…失敗をしない人間はいない。
いるのは失敗から立ち直れないやつと、立ち直れないやつだ。
…君は挫折を味わったが、再びこのカウンターの中に戻ってきて今日がある。
時は満ちたと思うがな。」



バッティングセンター
何かを振り切るようにひたすらバットを振る溜。
来島の言葉を思い出す。
『時は、満ちたと思うがな』


美和の会社の前で待ち伏せをする溜。
会食を明日に控え、思い悩む美和に声をかける。
「冴えないね!」

オープンカフェでランチをしながら話すふたり。
「あの…色々ごめんなさい。お詫びの電話もしないで」と謝る美和。
「こっちこそ、この前はごめんね。あんな言い方して」
「私のほうこそ、デリカシーがないっていうか、押しつけがましいっていうか、
飲みすぎちゃうっていうか…反省してます。」
「山之内シェフの件さぁ、できる限りのこと、さしてもらうよ」
「ほんとに!?」
「うん。」
「…でも…加瀬さんのことが…」
「ねぇ、解けた!?
ウォッカアイスバーグジントニックの謎。」
「え…」
「じゃあヒントね!…このココアを混ぜたスプーンで、
美和さんの紅茶をかき混ぜたらどうする?」
「怒る。だって紅茶にココアの油分が浮いちゃうもん」
「…それが僕のミス。」
「ウォッカアイスバーグはウォッカのロックに
ペルノーで香りづけするだけのシンプルなカクテルなんだ。
…次の注文はジントニック
これも何百回と作ってきたカクテルだった。
僕は完全に油断してたんだ。
ジントニックペルノーのついたスプーンで混ぜてしまった」
「でも、味なんて変わらないでしょ?」
ペルノーは油性は強いから、スプーンを水で洗ったくらいじゃ
強烈な香りが落ちないんだ。
……僕は自分のミスに気付かなかった。」
「それだけでクビ…?」
「それはただのきっかけ。傲慢になってたんだ。
カクテルコンクールで優勝したあとで。」
「…日本に帰ってきて、もうバーテンダーとしての自分は捨てたつもりだった。
だけど会長が…」

『本物のバーテンダーは、職業じゃない。生き方だ。』

「それでもう一度バーテンダーとして生きていきたい、そう思ったんだ。」
「……」
「正直、カーディナルのメインバーに立つべきなのかはわかんないけど、
美和さんの言う通り、今の自分を加瀬さんに見てもらうことでしか、
先に進めないんだと思う。」
「……」
「だから考えてみるよ。山之内シェフの件。」
大きくうなづく美和。



「…とは言っても、こそこそ偵察するような真似は…」
「シーーーッ!!!」
カーディナルホテルの厨房に山之内の偵察に来た溜と美和。

「現段階で手に入るフランス食材をご用意しました」
「…鮮度が悪すぎます。話になりません!」
「えっ!…まぁそうは言ってもここは日本です。なんとか色んな食材を
い…生かす方向で…!」
「私は完璧を求めてるんです。いい加減な味でいいんなら、他のシェフを使ってください!」」
「そ、そんなことをおっしゃらずに…」


BAR ラパン
「聞きしに勝る石頭だわ。」
「そんな言い方したら悪いよ」
「だったら、明日の夜あの人のこと説得する自信ある?」
「今のとこ……ナイ。」
「かーーー…。どうしよう…。お酒にもかなり詳しいみたいだし。
ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできないよ…」

ラパンのドアが開く。
「…溜ちゃん!」
「…!おばちゃんおじちゃん…!」驚く美和。
それは正装したさくら食堂のふたりだった。
「こいつの腕がよくなったもんだからさ。お礼かたがた寄らせてもらったよ」
「おかげさまでホラ、このとおり~~」
「(笑)いらっしゃいませ。こちらへどうぞ。」
美和の隣に案内される夫婦。
「三橋さん、さくら食堂の…」
「あぁ…!いつも佐々倉がお世話になってます。店主の三橋です。」
「杉山です、佐々倉がいつも…ご迷惑を。」
「こちらこそ、みなさんに迷惑をおかけしちゃって…
もう、うちの方は大丈夫です。ありがとな、溜ちゃん。」
「いえ…。今日はじゃあ快気祝いしましょう。ゆっくりしてってください」
「…じゃぁ、飲んじゃう前に、これ。」と紙袋を出すさくら食堂のマスター。
「お礼な。」
「いや、そんな…」
「大したもんじゃないけど受け取って。気持ちだから」
「あ…じゃあ遠慮なく。ありがとうございます。何だろうな…」
紙袋を覗き込む溜。
「……!」
「何?どしたの?」何か考え込む溜に美和が問いかける。
「ううん…」


編集部
「はい…今日は夕方の6時にホテルの正面に車をつけてください。
最初に銀座の岡林でお寿司を食べて、そのあとラパンに向かいます。
あ、ラパンに行くことは、店に着くまで
加瀬さんと山之内さんには内緒にしておいてもらえますか…はい、お願いします、
…ではのちほど。」
電話を切る美和。


BAR ラパン
念入りにカウンターを拭く溜。
「緊張してんのか?安心しろ。なんかあったら、
俺と三橋さんがなんとかしてやる。ですよね?三橋さん。」
「いつも通り。それでいいんです」
「…はい。」

ラパンのドアが開く。
「こんばんは。みなさんをお連れしました」
美和を先頭に来島、山之内、加瀬がつづく。
「お待ちしておりました」
「…ご予約は5名様と伺っておりましたが」
「私は4名でと…」
「ワシが、一名追加した。」と来島。
「もう間もなく来るだろう」
その途端、ドアが開いた。
「お待たせいたしました。」来島に深々と頭を下げる男。
「いや、わしらがちょっと早かっただけだ」
「もうひとりって…葛原さんだったの?」
「葛原のグラスも、飲んでみたいからな。…許してもらえるかな、三橋。」
「会長のご要望であれば。」
「いかがでしょうかな」
「結構です」と山之内。
「ぜひ。面白い趣向ですね」と加瀬。
「加瀬さん。勉強させていただきます」葛原が頭を下げる。
「こちらこそ。」
なんとも言えない表情を浮かべる溜。
「葛原、来た早々で悪いが、早速頼めるかな」
「かしこまりました」

カウンターに入り、シェイカーを振る葛原。
「どうぞ。エーワンでございます。」
「エーワン…。」とつぶやく美和。
「第一級船舶。クイーンエリザベス号のように、
世界一の豪華客船の意味だと言われています。」
おもむろに山之内の前に立つ葛原。
「カクテルでエーワンと名づけると…最高、超一流という意味になります。」
「いただこう。」

「おいしい…!」思わず美和がつぶやく。
「これがトップの味というわけか」
「山之内シェフに合うカクテルを、と会長から」
「素晴らしい…キレがあるのに、フルーティだ。」ご機嫌な山之内。
「エーワンの名に恥じない、完璧な出来栄えですね」と加瀬。
「恐れ入ります」
「あれじゃあ…佐々倉のカクテル、霞んじゃうんじゃないですか?」
心配する杉山と三橋。
「しかし会長、御託には乗りません。
私は世界中の酒を飲み飽きるほど飲んでおります」頑なな山之内。
「……では、次のグラスを」溜に促す来島。
「かしこまりました」
溜を見つめる美和。
「お召し上がりいただきたいのは、こちらです」
透明のボトルからグラスに注いでいく溜。
「まずは山之内シェフ、おひとりでどうぞ」
「ひとりで…?」
無言でうなづく溜。
「これがなんだかおわかりになりますか?」
「ブラインドか…。いいだろう」
グラスの中身を見極める山之内。
『ワインか…?いや、赤というより褐色…色はヴィンテージポートのようだ…。
度数は高くない…、なんだ?この微かな酵母臭…。』
「日本の味噌のようなアフターテイストだ…」
「味噌…?」
「わかった。35年ほどの熟成を経たシェリー。オロロソだ。」
どうだ、と言わんばかりに溜を見つめる山之内。
「では、みなさんも。」

それぞれ一口、口に運ぶ面々。
「なんだろうこれ…」
「そういえば、確かに味噌のような…」
「……」何かがわかったように含み笑いをする加瀬。
「それでは、正解のボトルを」
溜はカウンターの下からボトルを取り出す。
「こちらです」
黒い瓶に貼られたラベルには"本味醂"の文字。
「まさか…みりん!?」驚く美和。
「馬鹿…みりんなんて…」と杉山。
「これは知人の料理人さんにいただいた、厳選した素材を使い、
10年間熟成した本みりんです。」
「…ハッ!まさか…さくら食堂のぶり照り!?」
「…本みりんはもともと、焼酎にもち米と麹菌を加えて作る甘口のお酒なんです。
熟成させると色合いも味わいも変化していきます。
「失礼する!!!」カウンターをたたき、怒りをあらわにする山之内。
「バーでみりんを飲まされるなんて…!」
「申し訳ございません。何かお好みのものをご用意いたします」と謝る三橋。
「いらん!不愉快だ!!」
ラパンを出ようとする山之内。
「さすが世界のムッシュ山之内。驚きました。
わずかに残った麹菌のフレーバーからオロロソを推測するなんて…
…普通の舌じゃありません。」声をかける溜。
立ち止まる山之内。
「みなさんお酒に詳しい方ばかりなので、ご存じかとは思いますが
有名なエピソードがあります。
1995年、東京で開かれた世界ソムリエコンクールでフランス代表のソムリエが
北欧のスピリッツのブラインドに対して、梅酒と答えてしまった」
「梅酒?フランスの人が?」驚く美和。
「開催地が日本で、日本のお酒の勉強をしてきたため、
その先入観がつい舌を狂わせてしまったんです。」
「確かそのソムリエは、5年後のカナダ大会で優勝しました」と付け加える三橋。
「そうです。ですからソムリエとしての舌は一流です」
「そんな人が、梅酒とスピリッツを間違えるなんて…」
「……先入観か…。」と山之内。
「山之内シェフも、日本人という先入観に随分苦しめられたんじゃないでしょうか?」
溜の問いかけに眉をひそめる山之内。
「うむ…フランス以外の食材を使うとこれはフレンチとは呼べないと言われ、
伝統のレシピに忠実に作れば今度は味が違うと否定されてしまうからな」と来島。
「確かに…外国の人が作った日本料理はおいしくないって思っちゃうかも。」と美和。
「あなたはずっと、日本人には本物のフレンチなんか作れない。という
先入観と闘っていらした。」
「君はどうしてそんなことがわかる?」
「僕も外国のバーで勉強させていただいているとき、何度も同じ経験をしました。
でもそんなとき、師匠が言ってくれました。
『つまらない先入観に負けて、意固地になるな』と。」
「……」無言の加瀬。
「大切なのは、フランスらしいとか日本らしいとかいうことではないと思います。
お客様は、ムッシュ山之内の一皿を求めて、足を運ぶんですから。」
「……ふっ」少し笑って席に戻る山之内。
グラスに注がれたみりんを一気に飲み干す。
「ふふっ…なかなか、生意気なバーテンダーがいるんですね、この店は。」
「すいません。」

来島が声をかける。
「お気に召して…いただけましたかな。」
「日本の食材を使用する件、考えておきます」
力強く握手をする来島と山之内。
ホッとする面々。


「じゃぁね~」
送迎車に乗り込む来島と山之内を見送る美和、溜、加瀬。
「加瀬さん、今日はありがとうございました。」
「じゃあ、私もここで。」
「……加瀬さん!」溜が加瀬を呼びとめる。
「今日のグラスは…パリで加瀬さんの元で働いていたからこそ出せたグラスです。
僕はこれからもバーテンダーとして…」
「ムッシュ山之内は君のグラスを受け入れたかもしれないが、
私は君を、本物のバーテンダーとは認めない。」
ショックを受ける溜。
去っていく加瀬。


ラパンに戻った溜と美和。
カウンターでは葛原が待っていた。
美和が声をかける。
「今日は…ありがとうございました」
「お前は…本気でカーディナルのメインバーに立つ気はあるのか?」
「葛原さん…今はその話は…」間に立つ美和。
「わかりません…」
「わからないだと…!」溜の言葉に怒る葛原。
「ふざけるな!」溜の襟元を掴み壁に押し付ける。
「なぜ上を目指そうとしない…!なぜ完璧を求めない…!!!」
「私の店で手荒なマネは許しませんよ!」葛原に言い放つ三橋。
「申し訳ありません。」手を離す葛原。
「いえ、今日はありがとうございました」
ラパンを出ていく葛原。

「あのミスターパーフェクトが…あんなことを…」と杉山は驚く。
「私は…気持ちわかるな…。あの人も…本当は必死なんだと思う…」
葛原の出て行ったドアを見つめる溜。


翌日。
カーディナル会長室には加瀬がいた。
「昨日は付き合わせて悪かったね。」
「会長もお人が悪い。美和さんが私をあの店へ連れていくこと、ご存じだったんですよね」
「はっはっは。フランスフェアの、エキシビジョンの準備は進んでるかい?」
「ええ。まさかここでシェーカーを振れるとは思いませんでした」
「君…葛原と佐々倉の、どちらが神のグラスに近いと思う?」
「メインバーの件ですね」
「完璧なグラスを作った葛原くん、型破りといえども山之内シェフの心を動かした佐々倉。
どちらのグラスに神は宿るかな…」
「……」


船の上で洗濯物を干す溜。
「佐々倉さん」
「美和さん」
「これ、昨日のお礼」
紙袋を渡す美和。
「ありがとう。うまそ~~~!」
「……」無言でうつむいている美和。
「どうしたの?なんか元気ないね」
「私…わからなくなってきちゃった…。
誰がカーディナルのメインバーに立つべきなのか…
誰におじいちゃんの夢をかなえて欲しいのか…」


カーディナル会長室
来島が楽しそうに図面を引いている。
ふと転がる赤えんぴつ。
拾おうと立ちあがる来島の胸に痛みが襲う。
床に倒れ苦しむ来島。




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バーテンダーもあと2話。
次回から最終章。

白シャツの溜くんを眺められるのもあと2回かと思うと
めちゃくちゃさみしいです~~~><

溜くん……やっぱりもろ好みwわはは!